今回は近現代を代表する日本の作家二人、本と共に紹介させていただきます。
なぜこの二人?については、私が好きということはもちろん、二人の生きた時代は重なっていて(川端康成が20歳以上も年上ですが)、実際たまに飲みに行く仲でもあったそうです。私の年代から見ると、ほぼ同時代に生きた偉大な作家で、比較しながら見ると面白かったので記事にしました。
二人の接点
二人の接点としてはまずノーベル文学賞。1968年に川端康成が日本人で初めてノーベル文学賞を受賞しました。この時は三島由紀夫も有力候補の一人として注目されていたそうです。川端が選ばれたことに対して、三島は嫉妬するどころか、心から祝福したそうです。ただ内心は分かりません。それまでは作家としてお互いを強く意識する関係でありながらも師弟関係のような絆があったそうですが、受賞後二人の関係は変化し、距離を取るようになったと言われています。まあ納得はできますね。三島の魂ほとばしる作品を見ていると、作品には尋常ではない情熱をかけていたでしょうから。野心が当然ある訳で、他人の成功を手放しで喜べるほど心が広い人はいないですよね。
あとは人生の閉じ方。私は当時生まれていませんでしたが、本や写真などで、三島の衝撃的な最後を目にしました。リアルタイムで見ていたらなお衝撃だったと思います。彼らしいと言っては失礼ですが、まさに劇的な幕切れでした(切腹)。真相は分かりませんが、少なくない影響を川端にも与えたことでしょう。三島の死からほどなくして、川端も驚きの最後を遂げます(ガス自殺)。作品にも醸し出されていた彼らの死生観が、表出した形なのかもしれません。
コンプレックス
二人の経歴を見たところで、今度はより深く彼らの内面に迫っていきましょう。キーワードは「コンプレックス」
人間なら誰しもが持っているもの、あなたもありますよね? 私も当然あります・・・
それは著名な小説家であっても同じ。コンプレックスは、人間の真に迫るのに大切なもの、それは小説のような創作の原動力として欠くべからざるもの、と私は考えています。これを通して見てみると、彼らの人間性、作品との関係性が浮かび上がってくる気がするんです。
・三島由紀夫
よく見る壮年期の写真はマッチョで男らしい感じがしますが、実は彼が少年の頃は病弱で神経質だったそうです。学業は優秀でしたが、運動は苦手(学校での体育が免除されていた時期もあり)。祖母に溺愛され、女中の中で育てられ、家庭環境はどこか女性的で閉ざされた世界。自ら「母と女中たちの過保護の中で育った」と回想しています。こうした中で自分のひ弱な体への劣等感と、「男らしさ」や「強さ」への渇望が募っていきます。それが結果として彼を、ボディビルや剣道での肉体鍛錬に導きました。
こうした葛藤や鬱屈、固執の入り混じった感情は、自身の作品に、その雄弁な文体を通して、如実に表れているような気がします。そして人生の壮絶な最後にも―――
・川端康成
幼くして両親、祖父母、姉を次々に亡くしているそうです。わずか15歳で「天涯孤独」となり、この喪失体験が彼の人格に強く影響したと言われています。彼が残した日記にも「私は孤児であるよりも、孤独の化身である」と記されています。また非常に寡黙で、人前で自分の感情を語るのが極めて苦手。そう私たち内向型人間の先輩だったのです。
彼のこうした生い立ちと性格が作品にも表れているのでしょう。ただ三島とは正反対で、感情を直接はあまり語らない。風景や物を通して音なき声を通して語る―――
このように、それぞれが持っていた強いコンプレックス。同じ小説家として、その穴を埋めるように交わった二人。最後にその穴はまた掘り起こされる―――
川端康成 の本
ここからは、私が面白いと思った二人のおすすめ本を紹介させていただきます。
1.雪国
おそらく誰もが一度は目にしたことがあるであろう、それくらい有名な文から始まるこの作品。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。[・・・]
この作品を敢えて一言で表現するとしたら「静謐」です。雪景色や温泉街から漂うひっそりした雰囲気、それが主人公の内面と共鳴するように描かれています。成就しない恋の切なさ、無常感と相まって、シーンとした静けさ、余韻が作品全体から感じられます。
と言ってますが、自分が子供の頃にこれを読んでいたら、その味わい深さは、なかなか理解できなかったでしょうね^^;)
2.伊豆の踊子
孤独や憂鬱な気分から逃れるため伊豆へ一人旅に出た青年。旅芸人の一座と出会い、踊り子の少女に恋心を抱く。青年の淡く儚い恋心が、伊豆の自然と共に描かれています。
過剰な心理描写を排して、景色や会話の間から感情を滲ませる。旅の情景と登場人物の心情が重なり合う、旅情豊かな作品。
こちらは作者が、伊豆を旅した19歳の時の実体験を元にしているそうです。
3.千羽鶴
茶道の世界が舞台で、「わびさび」の精神が色濃く反映されています。人生の儚さや無常観が、登場人物が集う茶会を通じて表現されているよう。
茶道では、茶碗や掛け軸などの道具、それを扱う人間の所作を大切にします。小説でも、道具と所作、そして象徴となる「千羽鶴」に様々な想いが込められている。ただ敢えて直接的に文章には書かずに行間を読ませる形で、登場人物の心情を読者に感じ取らせる。
いかにも日本人らしい「空気を読む」という雰囲気が体現されている作品です。
三島由紀夫 の本
1.金閣寺
実際の金閣寺放火事件を題材にした作品。「美と破壊」正反対の意識に取り憑かれた主人公の狂気が描かれている(実際にあった事件で、初めて聞いた時は驚きでした)
三島の華麗でありながらソリッドで引き締まった文体、思わずうっとりしますね(三島と言ったら文体、そういう人は実際に多いです)。川端とは異なり、登場人物の心情や周りの情景を、技巧溢れる文章で書き込んでいます。
2.潮騒
ある島を舞台に、若い男女の純愛を描いた、三島には珍しい作品。ギリシャ神話の『ダフニスとクロエ』に着想を得ているそうです。
こちらの文体は、金閣寺と違って、爽やか・軽やかです。分量も多くないですし、初めて三島作品に触れる人にも読みやすいと思います。NHKの朝ドラ「あまちゃん」は、この作品をモチーフにしているそうですね。
3.仮面の告白
主人公は幼少期から同性への憧れを抱きながらも、それを隠し「普通」を装って生きます。自身の仮面をかぶった生き方と、心の苦悩を描いたとされる自伝的作品。
自分の本心を隠し、社会に適応するため自分を装って生きる。これは共感できますね。内向的な性格を隠すため、無理して外交的に装って生きてきた当時の自分と、重なり合う部分があります。
以上、今回は文学作品の紹介でした。
二人の人間性や、作品の特徴を知って、新たな魅力を発見してもらえたらうれしいです。
ここで紹介した以外も二人の本はたくさんありますので、あなたならではの お気入りの作品をぜひ見つけてください!






