今回は日本の職人シリーズ第2弾です。前回は“器の職人”を紹介しましたが、今回は“食の職人”です。食は人間にとって欠かせない大切な存在。体を作る栄養という以上に、人生をより豊かに彩る存在です。そんな食を扱う職人もやっぱり素敵でした😌
食、唯一無二の仕事
前回も紹介したように日本には職人さんがたくさんいます。陶芸(食器)、染織(服)、大工(家)など、私たちの衣食住に密接に関わっています。その中で今回ご紹介する食の職人が、他とは異なる大きな特徴があります。
- 五感
五感には、視覚(目)・聴覚(耳)・嗅覚(鼻)・触覚(体)・味覚(口)がありますが、味覚を扱うのは食が唯一無二、他ではありません。食以外の職人が作るものは、主に視覚だったり、触覚で感じるものが多いですね。食事は味覚と、香り、温度、食感といった嗅覚、触覚、聴覚も密接に関わっていて、食に欠かせない大切な要素です。また食事は人間の体に物を入れるという行為。ある意味において危険を伴う行為でもあり、それを作る人に対しての全幅の信頼(五感以外の心)も大切です。 - 寿命
職人が作る料理、作品とも言えますが、この寿命が非常に短いことが特徴です。例えば大工が作る家であれば、その寿命は何十年・何百年。食器や服でも数年といった単位です。しかし新鮮さが鍵となる料理は(特に生食が多い日本では)、素材を仕入れ・作って完成してから、人の口に入るまでが一瞬と言えるほど短いものが多い。儚ないとさえ言えるこの短さは、桜に見られる「散り際の美学」にも通じるものを感じます。 - 時間
寿命とも関係しますが、食は時間に対する感覚が問われます。時間帯、季節、旬などをつぶさに見極め、逃さないことが重要。またその日の天気、温度、湿度、お客さんの体調などは刻一刻と変化する状況の中で、タイミングを計って料理を提供する。派手な技のように、見てすぐ分かることはないけれど、職人の中にあるセンス、心意気、経験、勘などが浮き彫りになって料理に表れてきます。 - 命
食物連鎖。人間が日々食べる食事は、他の動物、植物も含めた大きな自然界の中で成り立っています。小言になりますが、大食いや激辛料理の挑戦など、最近は食がエンタメ化し過ぎているのが、私としては少し残念です。ただ日本人なら誰もが食事前に唱える(思う)言葉が「いただきます」。これにあるように、命をありがたく頂くという厳かな気持ち、古来の日本人は持っていました。職人からはそうした素材への敬意が感じられます。



職人たち
ここからは、食を扱う様々な職人たちをご紹介します。
寿 司
職人と言ったらまずお寿司、こう思うのは私だけでしょうか。寿司職人は、新鮮な素材の味を殺さず、極限まで活かす達人。
シャリの温度、ネタの状態、握る力加減まで、すべてに神経を注いでいます。江戸前寿司では漬けや昆布締めなどの伝統的な技も駆使し、熟成や仕込みの仕方にいぶし銀の経験が光ります。一貫の寿司に、己の五感と美意識、もてなしの心を詰める。その技を体得するために、職人は何年もの修業を重ねる世界です。味だけでなく、所作や心意気まで含めて、日本の王道を行くまさにTHE職人。
そ ば
そばを打つ音、切る音、すする音、日本人の私はそれを聞くとなぜか心が落ち着きます。そば職人は、水と粉という最小限の素材から、味・香り・のど越しのすべてを引き出す匠。
そば粉の配合、水回し、のし、切り、茹で。一連の工程には熟練の技が求められ、茹で時間は数十秒の短期決戦。気温や湿度に応じて配合を変えるなど、その日の空気感を見極める肌感覚も重要です。一見すると地味ですが、その一杯に職人の感性と誠実さが込められています。音や香りも含めて、静謐なわび・さびのような空間を作り上げる和の職人です。
ちなみに同じ麺類であるうどん、ラーメンの職人も日本にはたくさんいます。
和菓子
和菓子を見ると、その繊細な美しさに、思わず食べることを忘れて見入ってしまう。和菓子職人は、季節や行事を繊細な色と形で表現する芸術家。
練り切りや求肥など限られた素材で、草花や風景など自分の世界観を映し出します。一つひとつが手作業でつくられ、餡の包み方、形の切り出し、表面の彩色には熟練の技と感性が詰まっています。茶道や贈答文化とも深く結びつき、見た目の美しさと、やさしい甘さで心をほどいてくれる和菓子。手の中に四季のひとかけらが舞い降りた、そんな美しい風情が感じられます。
み そ
味噌汁を飲むと、ほっとした懐かしさが込み上げ、ふと実家を思い出す日本人。味噌職人は、大豆・麹・塩というシンプルな素材を、発酵の力と時間の経過で旨味に変える術師。
木桶で仕込む昔ながらの製法では、微生物とともに発酵を育て、数ヶ月〜数年かけて味を深めます。温度や湿度、発酵の進み具合を見極める経験と勘が求められ、赤味噌・白味噌など地域ごとの風味も特徴です。味噌は日本の家庭、風土に根付いた記憶と共にある味。日本人が大好きな味噌ラーメンにも欠かすことができない存在。
ちなみにもう一つのふるさとの味、醤油とは兄弟のような存在です。
以上、食の職人をご紹介しました。
ちなみに紹介した中で、自分が体験教室で実際に作ってみたことがあるのは、そばと和菓子です。和菓子はついこの前で写真があります。難しかったですが、やっていると細かい作業にどんどんのめり込んで時間を忘れるほど楽しかったです😄 体験してみるといかに職人たちの技がすごいか、しみじみと分かります(ちなみに右の完成写真はお手本です。自分のは出来が悪くて見せられません💧)

和食
ニュースになっていたので知っている人も多いと思いますが、私達が普段食べている「和食」は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。栄養バランスに優れた料理というだけでなく、「自然を尊び、季節を感じ、地域とつながり、心を込めてもてなす」という和食の根底にある考え方、日本人の精神性・価値観が評価されたということです。そんな和食を扱う日本の職人は最高です!

おにぎりと味噌汁、刺し身、だしの香るそば。私が海外へ旅行した時には、必ず恋しくなる食べ物です。そして帰って食べた時には、その味にほっとし、日本のお店のサービスの良さに感動します。






